小売業の未来に対する重点的戦略とZEBRAが考える方向性(セミナーレポート)

NRF APACにて発表した進化し続ける小売業の未来とZEBRAが考える重点的な戦略方向性について説明いたします。また、「顧客の要望に対応する力」を現場力と捉える小売業において、変化し続ける消費者の嗜好に臨機応変に対応が求められるフロントラインワーカーをサポートするZEBRAの最新テクノロジーをご紹介します。

ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
社長
古川 正知 氏

ゼブラ・テクノロジーズ会社紹介

本講演では「NRF APAC」にて発表した進化し続ける小売業の未来と弊社・ゼブラ・テクノロジーズが考える重点的な戦略方向性について説明する。また、「顧客の要望に対応する力」を現場力と捉える小売業において、変化し続ける消費者の嗜好に臨機応変に対応が求められるフロントラインワーカーをサポートするZEBRAの最新テクノロジーをご紹介したいと思う。

弊社は米国に本社を置く、自動認識製品の世界最大手のメーカー。モバイルコンピュータ、バーコードスキャナ、RFID、バーコードプリンタなどの製造販売、ロボティクスなどのDXとインテリジェント・オートメーションの推進などを行っている。年間売上高の約10%を研究開発費にあてており、昨年は5.1億ドル(約700億)を投じた。小売、運輸・物流、製造、医療、公共サービスなどの業界に注力している。

Android堅牢モバイル端末のマーケットシェアはナンバーワンの位置におり、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアの導入・運用・管理の効率化を図り差別化を行っている。Googleが定めるAndroid Enterpriseの最高位Gold Partnerの認定も受けている。将来への取り組みとして、インテリジェント・オートメーションに対しての投資も進めているところだ。

ゼブラの考える将来の小売業

ゼブラは将来の小売業の姿を3つの柱で構成されるビジョンを掲げている。
このビジョンを踏まえ、「The Modern Store」というテーマのもと、今回のNRF2024 APACでの展示ブース出展も行った。
1つ目の柱となるのは「顧客体験の向上」。精算エクスペリエンスの向上を図るためのソリューションを紹介する。スーパーへの来店時、最初に顧客はゼブラの端末を受け取りロイヤリティカードをタップする。するとこの端末はパーソナライズ化され、顧客情報に合わせたクーポンの提供や店舗案内をしてくれるようになる。決済までこの端末で行えるため、迅速に精算手続きまで行ってくれるという仕組みだ。

他にもモバイルPOSと呼ばれる端末も開発している。従業員はこのモバイル端末でその場でカード決済ができるため、買い物客はレジに並ぶ必要なく、接客の流れでそのまま支払いができるようになる、これはそんな魅力的なソリューションだ。
店頭サービスの改善には、全ての従業員にスマートデバイスを持たせ接客力の強化を図り、生成AIの活用により業務手順の自動確認ができるソリューションを開発している。

2つ目の柱は「最適化された在庫」。店頭在庫改善のためにRFIDを使い棚卸や商品補充に対応した在庫の見える化や、正確な在庫状況の把握により販売機会の損失を最小化にとどめられるよう努めている。
店頭品出しやオンラインオーダーのピッキングを効率化するために、従業員がウェラブル端末でチェックし精度の向上を図る。他にも棚割りの確認やマーチャンダイジング目的にタブレットを使った管理に対応したソリューションも存在する。

3つ目の柱は「エンゲージメントの高い従業員」。従業員管理の最適化、タスク管理の簡素化を図るためのソリューションを開発。従業員間のコミュニケーション連携強化として、モバイルコンピュータでワークPOSコネクトと呼ばれるPTTソリューションやマイクロソフトのTeamsを活用し、PTT、無線トランシーバーのような使い方も可能とする。

未来を可能にするコア・テクノロジーイノベーション

ゼブラでは小売業の未来についてコア・テクノロジーのイノベーションにも注力している。 まずは「コンピュータビジョン」、商品の表示が正しくされているかを確認し、モバイル端末のカメラで画像情報をAIで解析する。これまで目視やハンディターミナルで行っていた作業の効率化となり、誤情報を防ぐことができる。

次に「ディメンショニング」、寸法計測のことだ。これまでメジャーで計測していたものが、カメラの精度の向上に伴い自動計測が可能になった。荷物の寸法を測り入力作業を行っていた手間が自動化される。

「生体認証ログイン」はサーバーに生体情報を残さないソリューションで、IDカードに二次元バーコード化した生体情報を印字、その情報を読み取り、顔認証を行うというものだ。業務で使用しているモバイルコンピュータのセキュリティ上での懸念に対応していく。

「拡張現実(AR)」を業務で活用を始めようとしている。例えば倉庫でのピッキング作業では、ピッキングすべき商品がモバイルコンピュータ上に表示され、その指示に従うだけだ。新人でも即座に対応ができるため、これまでのトレーニングに費やしていた時間も不要となる。

「オンデバイス大規模言語モデル(LLM)」は生成AIを活用した接客対応で、顧客を待たせることなく適切な回答を準備できるようにする。このソリューションはオンデバイス端末上で行うため、クラウド経由での懸念となる通信回線の問題なども回避できるようになっている。

「進化するスマートデバイスのフォームファクター」として、今後は業務を行う上で全ての従業員にスマートデバイスが必要不可欠となってくると考える上で、特にウェアラブル端末のニーズに注目している。

そして最後に「画像解析を活用したチェックアウト」だ。セルフレジの普及とともに盗難が増え店舗の損失が問題となっている。画像解析の技術を活用することで、商品の画像情報とバーコード情報の不整合を瞬時に解析することで、盗難防止対策を図ることができる。

生成AIによってこれから色々なことが大きく変わろうとしている。ゼブラでもAIを活用したインターフェースの増加により業務端末の在り方も変わってくると考えている。顧客の声を聞き、研究開発・実証実験を行い、今後も未来の変革に備えていく姿勢を貫いていきたい。