気になる日本での公開時期は……?
この生成AIアシスタントは、一部のユーザーに使用してもらい、フィードバックを受けながら常に改修を加えるアジャイル方式で開発を進めている。その裏ではユーザーの会話データを蓄積し、生成AIがその会話データを学習することで、提案の精度を高めている。「英語圏のボキャブラリーにおいては、一定程度クオリティが上がってきた」と大島氏も自信をのぞかせる。
「例えば『ポンポン跳ねる』という表現を『反発力』ととらえるのか『クッション性』ととらえるのか、といったところはまだ人間の感性に近づけていく余地があるが、接客・提案のクオリティは間違いなく上がっている。ユーザーからのネガティブなフィードバックも今のところはない」
主要KPIに設定するコンバージョンレート(サイト訪問者のうち、どのくらいの割合が購入などのアクションに至ったかを示す指標)も、生成AIアシスタントを使った場合とそうでない場合で数字に明確な違いが表れているという。
もっとも、大島氏は「人間の接客対応のクオリティを100%再現できるかというと、そこまでは考えていない」と、生成AIの限界にも言及する。
「生成AIアシスタントはDTCにおける顧客体験価値を高めるためのインプルーブメント(改善)施策であり、リアル店舗での有人対応にとって代わるものではない。また、ASICS SHOE FINDERのように簡潔かつスピーディーに提案してくれる体験を好むお客さまもいる。あくまで選択肢の一つであり、目的によって使い分けてほしい」
気になるのは日本における公開時期だが、「北米地域での最終テストがおおむね収束してくれば、早くて第2段階、遅くとも第3段階のタイミングで、セグメントを絞ったテストの形で開放したい」と大島氏は意欲を見せる。
ナイキ、アディダスなどグローバルブランドに、ミズノ、ヨネックスなど国産メーカー、さらにOnやHOKAなどの新興勢力も加わり、競争が激しさを増すフットウエア市場。アシックスの生成AI導入が戦国時代をリードする一手となるか、注目したい。