クシュタールも苦戦、買収実現は不透明
セブン買収により米国事業のスケール化を実現させたいクシュタールだが、同社の収益の多くの部分を占める米サークルK併設のガソリンスタンドもガソリン販売が不振に陥っており、米セブン-イレブン同様、生活防衛意識を強める消費者の需要減衰で苦戦している。
つまり、クシュタールの買収提案は自社の起死回生をねらったものであり、たとえ買収が成立しても、比較的所得が低い顧客を相手にする米コンビニ市場の低迷という、より大きなトレンド自体は変わらないことには注意が必要だろう。
加えて米論壇では、買収実現が不透明だとの論調が支配的だ。米ウェルスマネジメント企業CLSAの日本ストラテジストであるニコラス・スミス氏は、米経済専門局CNBCの10月7日の番組で、「この案件が敵対的買収に発展するとは思わないが、企業買収分野における日本の法制度は極めて透明性に欠ける」と述べ、順調に話が進まないとの見解を示した
オーストラリアの投資企業であるセンジン・キャピタルのジェイミー・ハルス氏も同番組で、「セブン&アイの株主は、クシュタールがよりよい条件を出したにもかかわらず交渉が進んでいないことに不満を覚えている」と語った。このように米メディアでは、日本の制度や企業文化の不透明さが、買収交渉を遅らせてゆくとの見方が支配的だ。
一方、コンサルティング企業グローバルデータ(GlobalData)の小売アナリストであるニール・サンダース氏は米小売業界サイトのリテール・ワイヤー(RetailWire)で、「クシュタールの買収提案は規模が大きく、大型合併に否定的な連邦取引委員会(FTC)が難色を示す可能性がある。日本の当局の動きも含めて、実現には超えなければならないハードルが多い」との見方を明らかにした。
こうした中、リテール・ワイヤーは「米国のセブン-イレブン店舗は、掲示板型ソーシャルニュースサイトのRedditなどで往々にして『時代遅れ』『店舗周りの環境や治安が悪い』とされて評判が芳しくないのに対し、日本のセブン-イレブンでは質の高い食品やサービスが提供されている」と分析し、米国のセブン-イレブンが日本並みのクオリティをめざすべきと論じており、興味を引く。
いずれにせよ、米国では「投資家がセブンの業績回復を待ってくれる猶予はあまり長くない」と見られており、米国事業の復活は待ったなしのようだ。