混迷極めるセブン&アイ、“非コンビニ事業”は売却決定
大きな業界再編の動きはそれだけではない。
24年8月、国内2大流通グループの一つであるセブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)に対して、カナダの大手コンビニエンスストア(CVS)アリマンタシォン・クシュタール(AlimentationCouche-Tard)が買収を提案していることが明らかになった。
セブン&アイは対抗策として創業家の伊藤家がMBO(経営陣による買収)を画策し、総合商社の伊藤忠商事(東京都)に「戦略パートナー」としての出資を要請したものの、同社は25年2月に検討終了を発表。セブン&アイはMBOを断念し、自力での再成長と企業価値向上を迫られることとなった。
混迷が続いていたなか、今年3月6日にはおよそ9年ぶりに経営体制を刷新。5月の定時株主総会の承認を経て、井阪隆一社長が退任して特別顧問に、現社外取締役でウォルマートや西友、ファーストリテイリング(山口県)で経営幹部を歴任したスティーブン・デイカス氏が社長にそれぞれ就任すると発表した。デイカス氏は、総額2兆円に上る自社株買いを経た株主還元の強化、北米CVS事業のIPO(新規株式公開)などの具体策をすでに表明している。
他方、セブン&アイはこれらの動きと前後して、24年10月にイトーヨーカ堂(東京都)、ヨークベニマル(福島県)、ロフト(東京都)など「スーパーストア(SST)事業グループ対象会社」の29社を統括する中間持株会社のヨーク・ホールディングス(東京都:以下、ヨークHD)を設立。“非コンビニ事業”を実質的に切り離すことで、CVS事業に経営資源を集中させる姿勢を示した。

そして今年3月、ヨークHDを米投資ファンドのベインキャピタルに8147億円で譲渡することが発表された。9月1日を効力日として売却後、セブン&アイは35%の持ち株分を再出資するが、ヨークHDはベインキャピタルを新たな戦略パートナーに迎え、再成長を図りながら早期のIPOをめざす。
ただ、ヨークHDは現状、総合スーパー、食品スーパー(SM)、外食、その他専門店など多種多様な業態を抱える。そのため売却後の“切り売り”を予測する向きも少なくない。ベインキャピタル主導のもと、どのような成長戦略が推進されるのか注目が集まる。