“コンビニ一本”で企業価値向上へ セブン&アイの新経営戦略の成否
※この記事は、約3か月前にDCSオンライン+会員向けに公開した記事を、フリー記事として再公開しています。
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/スティーブン・デイカス社長:以下、セブン&アイ)が8月6日、2031年2月期までの経営戦略を発表した。
イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)などの“非コンビニ事業”は売却が決まり、懸念されていたカナダのコンビニエンスストア(CVS)大手による買収危機もいったんは脱した同社。CVS事業一本に絞り、どのような成長戦略を描いていくのか。
キーポイント
|
組織体制を変革し事業会社と連携強化
「かつてほどお客さまからの信頼を獲得できていない。積極的に変化を受け止めることもできず、現状に少し甘んじてしまっている」。8月6日、東京都内で開かれたセブン&アイの経営戦略説明会で、スティーブン・デイカス社長は危機感を口にした。

国内では業界トップを独走し、海外事業も順調に拡大し続けてきたセブン&アイ。しかし、直近は業績が振るわず、苦しい状況が続いている。デイカス社長は、こうした状況を招いた原因の1つに「信頼と誠実」「変化への対応」といった創業者・伊藤雅俊氏や鈴木敏文氏らの精神が失われていることを挙げ、「創業の精神を取り戻すことがとても重要であり、今回策定した計画はその第一歩だと位置づけている」と続けた。
まず見直したのがセブン&アイと各事業会社の組織体制のあり方だ。現在、セブン&アイ傘下には、国内事業を手がけるセブン‒イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長:以下、セブン-イレブン)と、成長の柱とする北米CVS事業を担う7-Eleven, Inc(. 以下、SEI)、日本と北米以外の海外事業を担う7-Eleven International LLCがある。
デイカス社長によると、これまで各事業会社は独自に経営していた。一方で、セブン&アイが「現場の状況を十分に理解することなく、何をすべきか、何をしてはいけないかを指示することもあった」と指摘。「一貫性と明確さが欠如し、事業会社にとって実行力とスピードの面で深刻な課題となっていた」と振り返った。

そこで、新たな体制では役割分担を明確にした。セブン&アイはデイカス社長、伊藤順朗会長、副社長で最高管理責任者の木村成樹氏ら5人でチームを結成。チームと各事業会社で毎月会議を開き、業績などの月次報告を受ける機会を設けたほか、毎週コミュニケーションをとるようにした。各事業会社の意思決定を自律させつつ、セブン&アイが適正なサポートを行うようにしたという。
本部機能の改革にも着手した。現状はCVS事業に加えて、食品スーパーや総合スーパーなど複数の事業のサポートも含めた体制になっている。CVSに特化した事業グループへ変革するため、新体制に合わせたITシステムの構築などを進める。組織のスリム化も図り、31年2月期までに販管費を約400億円削減する予定だ。
ページ: 1 2