トライアルが西友買収を完了 西友トップには楢木野仁司氏が就任

会見で示された4つの戦略とは…

 会見では両者の統合後の具体的な動きとして、「①商品の相互展開」「②関東でのTRIAL GOの垂直立ち上げ」「③生産性向上」「④リテールメディアの本格展開」の4つの戦略が示された。

 まず「①商品の相互展開」では、「みなさまのお墨付き」シリーズを始めとした西友のプライベートブランド(PB)を今秋から順次トライアル店舗でも販売を開始することを発表した。同シリーズは首都圏を中心に高い認知度を誇り、全国への供給体制を整えることで「価値の高い商品の広域展開」を加速させる。また、トライアルのグループ会社の明治屋(福岡県)が開発・製造する総菜を西友店舗でも展開する方針だ。

 「②関東でのトライアルGOの垂直立ち上げ」については、トライアルが九州を拠点に開発・展開してきた1000㎡以下の小型店「トライアルGO」を関東圏で展開する。今後、西友の既存店をハブに商品を供給する体制を構築、都心型フォーマットとして複数店舗を年内にも出店していく。まずは数店舗を出店し、ブラッシュアップさせ、完成度を高めながら拡大を図る構えだ。

 「③生産性向上」として、全国に約50拠点を構える両社の物流・製造施設を、整理・統合する方針が示された。たとえば、現状ではトライアルの関西エリアにおける製造拠点はすでにフル稼働状態にある一方、西友側には中部や関西に稼働余力のある拠点が複数ある。これらを活用することで生産性を高め、さらに商品供給の精度とスピードを同時に引き上げるねらいだ。

 最後に示されたのは「④リテールメディアの本格展開」だ。トライアルはこれまでも、自社開発のサイネージ端末やID-POSデータを活用し、買物中の顧客にリアルタイムで最適な商品情報を届ける「One to One」型のリテールメディアを構築してきた。今回の統合により、こうした仕組みを西友の店舗網に広げていく構想を明かした。

 トライアルの永田社長は「メーカー・小売・顧客の三者を結ぶ新たな販促プラットフォームとして機能させたい」と話し、従来の広告モデルに依存しない販促戦略への転換を加速する考えを示した。トライアルと西友の共同展開によって、消費者接点のデジタル化と広告収益化の両立をめざす新しい小売のかたちを模索していく考えだ。 

 九州から全国へと店舗網を広げてきたトライアルと、首都圏を中心に顧客基盤を築いてきた西友。両者の統合によって流通グループ“第三極”としての地位を確立することはできるか。新生トライアルの動向から目が離せない。

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