業務用端末の”乱立”を解消へ! イオンリテールの「オールインワンデバイス」の全貌

1人当たり年間数十時間の作業時間短縮に

 実際に店舗で行った検証では、端末統合による成果が明確に表れた。これまで各デバイスを取りに行くために店舗内を頻繁に移動したり、デバイスごとにログイン作業を行っていた時間が削減され、1人当たり年間数十時間の作業時間短縮効果が実証された。イオンリテールは広大な店舗面積を有する店舗が多いため、こうした物理的移動の負担軽減だけでも大きな生産性向上につながるという。

OCRスキャン機能
OCRスキャン機能

 さらに、端末のOCRスキャン機能を活用することで、これまで全商品で毎月実施されていた賞味期限チェック作業の負担も大幅に軽減された。また、商品位置検索システムについても、従業員の作業効率化だけでなく、ネットスーパー利用者向けのピッキング作業にも今後活用される見通しだ。現場スタッフからの反応も上々で、「端末が1台になりシングルサインオンで操作できるようになったことで、業務の煩雑さが大幅に減った」「業務が楽になり、お客さま対応に集中できるようになった」という声が寄せられている。

テクノロジーを最大限活用し、人間にしかできない価値を追求する

 今後、イオンリテールは、25年度中に約390店舗にオールインワンデバイスを順次導入する計画だ。さらには端末機能の強化を進め、レジや在庫情報とのデータ連携によるさらなる自動化をめざす。これにより、商品の値引き率設定や発注量調整まで自動化される見込みだ。

 また、同社が推進するオムニチャネル戦略との連携も強化していく方針だ。具体的には、顧客向けスーパーアプリとの連携を進め、店内の商品検索やクーポン提供、配送サービスまでシームレスな体験を提供する仕組みを構築するという。こうした取り組みを通じて、従業員が業務負担を軽減しながらも、より顧客接点を増やし、「人らしい接客」を充実させる店舗をめざしている。

 山村氏は今後のビジョンについて「テクノロジーの力を最大限活用しながらも、あくまで接客や商品提案といった人間にしかできない価値を追求していきたい。従業員にとって働きやすく、お客さまにとって温かく、元気な店舗を実現したいと考えている」と力を込めた。

 イオンリテールが推進するDX戦略の核となるオールインワンデバイスの導入は、店舗運営の新たな基盤となり、従業員の働き方改革と顧客サービスのさらなる向上につながるだろう。

ページ: 1 2

Previous Post Next Post