サザビーリーグがDX支援を本格外販へ 新会社「アウルスケープ」の戦略とは
「Ron Herman(ロンハーマン)」「Afternoon Tea(アフタヌーンティー)」など、ファッション・生活雑貨分野で数々のブランドを展開するサザビーリーグ(東京都)。同社は2024年11月、社内のDX推進室を独立させるかたちで新会社・サザビーリーグアウルスケープ(東京都:以下、アウルスケープ)を設立した。リアル店舗運営で培ったブランディング力と最新デジタルソリューションを掛け合わせ、グループ内外にブランドエクスペリエンス(BX)の向上を支援する。グループの強みを生かしたアウルスケープの戦略に迫る。

DX推進室を「分社化」したねらい
アウルスケープの設立は、サザビーリーグがここ数年かけて進めてきた経営体制変革の一環だ。24年4月には同社のIT部門がサザビーリーグIRIS(東京都)として独立しており、同様の流れを汲んでいる。これによりグループ企業がそれぞれ独立性を高め、スピード感を持って事業を推進できる体制が整いつつある。
アウルスケープは、サザビーリーグの「DX推進室」を母体としており、これまでグループ内の約40ブランドに対してDX支援を行ってきた。今後は培ったノウハウを外部企業にも提供していく方針だ。
アウルスケープが提供するコンサルティングサービスの柱は、大きく分けて4つある。「ブランディング支援」「SNSマーケティング支援」「EC構築・運用支援」「CRM構築・分析支援」である。これらを単独で提供するのではなく、BXを軸に統合的に設計・運用する点に同社の特長がある。
まず、1つ目のブランディング支援は分社化に合わせて新設された領域だ。顧客との接点がデジタルへと大きく移行するなか、ブランドのミッションやビジョン、ターゲット設定を改めて整理・言語化し、デジタル時代に最適化したブランド体験を提供するための基礎を築く。「SNS運用やECサイトを見直す際、結局はブランドの根幹となる価値観やコンセプトに立ち返る必要がある。その再定義を行うのがわれわれの役割だ」とアウルスケープの相川慎太郎社長は話す。
次にSNSマーケティング支援では、おもにインスタグラムの運用設計、コンテンツ企画、動画制作、インフルエンサーのキャスティングなどのサービスを提供する。とくにストーリーやリールといったショート動画を強化しており、実際にグループ内のあるファッションブランドでは、ストーリー連載企画の導入により閲覧数が2倍になるといった成果を出している。
EC支援領域では、既存サイトのアクセス解析や改善提案を中心に、サイトの新規構築に向けた開発ベンダー選定、コンペ運営、WEB広告の予算配分設計など幅広く対応する。サザビーリーグの特徴であるブランドごとの多様なカートシステムに対応したノウハウを提供することで、他のコンサルティング企業との差別化を図っている。
CRM支援は、店舗とECの顧客データ統合や、BIツールを用いたデータ可視化、マーケティングオートメーションによるシナリオ設計・運用支援を行う。とくにデータ基盤の整備が進んでいない中小規模のファッション企業からの引き合いがあるという。
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