BtoCからBtoBへ 米ホーム・デポ、ビジネスモデル大転換の理由と成否
利幅が大きいプロ向け市場で規模拡大へ
一般家庭向けの大規模改修需要が伸び悩む中、ホーム・デポは中長期的な成長戦略としてビジネスモデルの大転換を図っている。従来のBtoC中心の方針を見直し、利幅が大きく、住宅供給不足により今後の市場拡大が見込まれる建設業者向けのBtoB販売を強化するというものだ。
その一環として、同社は24年6月、建築資材販売大手のSRSディストリビューション(SRS Distribution:以下、SRS)を約182億5000万ドル(約2兆7010億円)で買収。続く25年6月には、SRSを通じて同業のGMS(Gypsum Management and Supply)を約43億ドル(約6364億円)で傘下に収めた。
この2件の大型M&Aにより、ホーム・デポは全米で合計1200カ所超の配送拠点、8000台以上の配送トラックを保有する一大物流網を構築。約500億ドル(約7兆4000億円)と見込まれるプロ向け建材市場で、販売量の最大化と物流コストの抑制をねらう。
また、ホーム・デポおよび傘下のSRS、GMSは、ウェブ上の注文受付から配送手配までを自動で処理するシステムを導入している。こうしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、従来の人海戦術による業務処理から脱却。人件費を抑制しながら、高収益な法人案件を効率よく獲得できる体制を整えている。
こうした動きに対し、同業大手のロウズ(Lowe’s)も25年8月、建築資材の販売業者、ファウンデーション・ビルディング・マテリアルズ(Foundation Building Materials)を88億ドル(約1兆3000億円)で買収し、法人向け建材事業の強化をしている。同時に、連邦政府は地域ごとに異なる建築基準や用途地域(ゾーニング)規制を標準化するなど、住宅取引に伴う諸費用を引き下げる住宅緊急事態宣言の発出を検討している。この政策が実現すれば、ホーム・デポやロウズのBtoB部門への追い風となるだろう。
ホーム・デポなどホームセンター大手は本業の消費者向け小売を強化しつつも、BtoBに軸足を移すことで財務強化を推進している。BtoB事業で蓄積された自動化・効率化のノウハウは、BtoC事業に応用できるだけに、今後の展開が注目される。
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