「ハナマサ化」するスーパー玉出……変化&進化する「安売王」の現在地

「日本一の安売王」を掲げ、ド派手なネオンと価格破壊でかつて大阪を席巻したスーパー玉出。だが、そのビジネスモデルは今、曲がり角を迎えている。「ただ安い」だけでは響かなくなった消費者ニーズの変化、強力な競合の台頭、そして安売りを阻むコスト高騰の波──。内外からの圧力に直面し、大きな変革期にある玉出が生き残りをかけて選んだのが、業務用スーパー「肉のハナマサ」との提携だ。大阪のアイコンはどこへ向かうのか、実態を確かめるため現地へ飛んだ。

赤と黄色が目を引くスーパー玉出恵美須店の外観。まさに「安売王」の風格

次なる一手として選択した花正との提携

 大阪のシンボル・通天閣がそびえる新世界エリア。串カツ店の看板がひしめき、外国人を含む観光客と地元民が交錯、独特の熱気が渦巻く下町情緒あふれる一角だ。今回の目的は、この地での競売りを機に産声を上げた「スーパー玉出」の現在を確かめることである。

 同社の歩みを振り返ると、1978年、大阪市西成区で常設店を構えたのが食品スーパーとしての起こりだ。黄色と赤を基調とした看板、眩いネオン、そして名物販促の「1円セール」。その独自性は、単なる食品スーパーの枠を超え、大阪のアイコンとなった。最盛期には市南部を中心に60店舗近くを展開。不動産業も手がけるなど、地域で大きな存在感を放っていた。

 しかし、その勢いに陰りが見え始める。2013年からは新規出店を凍結、2018年、スーパー玉出の運営会社はフライフィッシュへ事業を譲渡することになった。

 いわば事業承継というかたちで再スタートを切った玉出だったが、かつての活気は失われつつあった。近年はロピアやオーケー(いずれも本部は神奈川県)といった価格訴求を得意とする競合の関西進出、さらに各種コストの高騰などもあってか、店舗数は最盛期の約3分の1となる19店舗まで減少している。

 そんな中、スーパー玉出が次なる一手として選択したのが、業務用スーパー「肉のハナマサ」を展開する花正(東京都)との提携だった。2024年8月のことである。

 提携のねらいは、ハナマサの強みである大容量商品や独自商品を導入し、新たな顧客層を獲得することだ。現在、スーパー玉出の店頭にはすでにハナマサの商品が並び始めているという。大阪の人気食品スーパーは、この提携で再び以前のような輝きを取り戻せるのか。その答えを探るため、私は今回の現地調査に臨んだのである。

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