「ハナマサ化」するスーパー玉出……変化&進化する「安売王」の現在地

名物販促「1円セール」は縮小

 通天閣から北西300m、「恵美須店」の前に立つ。見上げると、派手な看板は健在だ。しかし、そのカラフルな光景の裏に、往時の賑わいとは異なる静けさも感じていた。

恵美須交差点から望む通天閣。スーパー玉出恵美須店はこのすぐそばだ

 私は早速、店内に足を踏み入れた。店舗の間口と比べると奥に長いためか、実際以上に広く感じられる。入口すぐの青果部門では、キャベツ、にんじん、トマトといった頻度品を「特別奉仕」の文字が踊るプライスカードを使って売り込んでいる。売場の上部には、スーパー玉出のシンボル、ネオンが輝く。

 柱回りには、「スーパー玉出にようこそ!」と記されたポスター。日本語のほか中国語、韓国語、英語の順で外国語でも表記している。観光スポット近くの店舗だけに、インバウンド需要も期待しているのだろう。

スーパー玉出恵美須店の外観

 店の奥にまっすぐと続く主通路をしばらく進むと、精肉部門の手前付近の左手に高いゴンドラが据えてあるのに気づく。近づくと「肉のハナマサ」のPB(プライベートブランド)を集めたコーナーだった。

 見ると「クワトロチーズボール」「お肉屋さんが作ったビーフシチュー」といった菓子類や加工食品のほか、直輸入した「ホールトマト」などを「特別価格」で訴求している。いずれも黄色をベースとしたパッケージなので、スーパー玉出の看板が赤と黄色を基調としていることと相性がよく、違和感なく溶け込んでいるように感じられた。

 店のもっとも奥に配置しているのは精肉部門。ここもまた、玉出らしさとハナマサの要素が混在していた。「米国産牛上バラ切り落とし」(100g260円)といった安価な商品に加え、「国産黒毛和牛スライス」(同750円)や「和牛ミスジ焼肉用」(同850円)など高品質な商品も並ぶ。ハナマサの商品力、ノウハウは、新たな顧客層をつかむのには効果的かもしれない。

スーパー玉出の新たな顔? 「肉のハナマサ」PB商品「ホールトマト」税抜138円

 しかし「日本一の安売王」のイメージを支えてきた名物販促は縮小している。かつて毎月1のつく日に行われていた1円セールは、今年4月から「毎月1日のみ」に変更されていた。提携による品揃えの強化の一方、コスト高騰による販促の見直し。経営の合理化が求められる時代、玉出は「安さ」という看板を守りつつも、次なる方向性を探している。大阪の街に根差したこのスーパーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。(後編に続く)

ページ: 1 2

Previous Post Next Post