アメリカで急速に広がる「シードオイルフリー」の潮流とは
外食にもシードオイル不使用の動きが広がる
外食チェーンでも同様の動きが広がっている。Sweetgreenは全米に約250店舗を展開するサラダ専門のファストカジュアルチェーンで、都市部のオフィスワーカーや健康志向の若者に人気がある。23年10月、同社は全店舗で調理に使う油をキャノーラ油やひまわり油からエクストラバージンオリーブオイルに切り替えると発表した。
また、True Food Kitchenは全米で40店舗以上を展開するレストランチェーンで、「季節の食材を使った健康的な料理」をコンセプトに幅広いメニューを提供している。25年2月、同社は全店舗でアボカドオイルとオリーブオイルのみを使用し、全メニューを対象に「100%シードオイルフリー」を達成したと発表した。
同社は22年に「すべての調理油をアボカドオイルとオリーブオイルに切り替える」と公約し、段階的にメニューの約98%からシードオイルを排除してきた。今回の発表で残っていたアイテムも含めて完全切り替えを完了し、レストラン業界でいち早く「シードオイルフリー」を実現したことになる。
「よりよい油」を求める消費者に対して専門家の意見は?
True Food Kitchenのブランドマーケティング責任者Taylor Bulen氏は、著者のインタビューに、「シードオイルを排除することは、True Food Kitchenが約20年にわたって掲げてきた良質な食材と体に優しい食事へのこだわりの、自然な次のステップだった。
オリーブオイルやアボカドオイルといった、心臓によいとされる代替油を使うことで、私たちは『本物の食事は体を満たし、心を満たすものである』という信念を守りながら、食材基準を進化させ続けていく」と答えてくれた。顧客からの反応も良好だという。

こうした事例は、シードオイルの代替としてエクストラバージンオリーブオイルやアボカドオイル、さらには動物性油脂であるビーフタローの利用が広がっていることを示す。同時に、外食から冷凍食品まで「よりよい油」を求める消費者ニーズが強まっていることを象徴している。
ただし、専門家の見解は分かれている。米国心臓協会(AHA)や世界保健機関(WHO)は多価不飽和脂肪酸を含む植物油の利用を推奨しており、ハーバード大学 T.H.チャン公衆衛生大学院の研究者も「ビーフタローは飽和脂肪が多く、シードオイルより健康的とは言えない」とも指摘している。
シードオイルフリーの潮流は確かに拡大しているが、科学的根拠を踏まえた冷静な判断と、食生活全体のバランスを意識する姿勢も求められている。
ページ: 1 2