平均日販69万円! 沖縄ファミリーマート、強さの源泉は「地域密着」
※この記事は、約3か月前にDCSオンライン+会員向けに公開した記事を、フリー記事として再公開しています。
沖縄県内でコンビニエンスストア(CVS)の競争が激化している。2019年に「セブン-イレブン」が進出して以降環境は激変し、25年には人口10万人当たりのCVS店舗数が全国3位になった。そのなかでも好調なのがファミリーマート(東京都/細見研介社長)だ。
直近の業績は、売上高・平均日商ともに過去最高を記録。店舗数も大手3社の中で最多となっている。県内で店舗を運営する沖縄ファミリーマートの糸数剛一社長が語った、好調を支える戦略とは。
キーポイント
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平均日商は69万円に
「3~5年のうちに、(人口10万人当たりの店舗数が)沖縄は全国1位の競合区になるだろう」
大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」の開業を目前に控えた7月下旬、東京都内で開かれた地域戦略説明会で、沖縄ファミリーマートの糸数剛一社長はこう語った。

19年にセブン-イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長)の子会社、セブン-イレブン・沖縄(沖縄県/久鍋研二社長)が初出店してから6年、競争環境の変化はめざましい。各社が公表している県内の店舗数は、「セブン‐イレブン」が195店舗(25年7月末時点)、「ローソン」が263店舗(25年2月末時点)、「ファミリーマート」が337店舗(25年6月末時点)となっている。
実際、3社の出店スピードはすさまじいものがある。24年度の3社の県内店舗数は合計791店舗。18年度の店舗数は556店舗で、6年で235店舗が増えた計算になる。
その結果、沖縄ファミリーマートによると、19年は人口10万人当たりのCVS店舗数は全国で45位だったが、今や3位にまで上昇。かねて飽和状態と言われてきたCVS業界だが、沖縄はとくに異質な環境となっている。糸数社長はこうした状況を踏まえ、冒頭の発言に至ったというわけだ。
そうしたなかでも、沖縄ファミリーマートは成長を続けている。同社の24年度の売上高は、過去最高の826億円。10年度の411億円から2倍超に成長し、平均日商も55万7000円(10年度)から67万6000円まで伸びた。
コロナ禍で一時落ち込んだものの、コロナ前のピークだった19年度(売上高807億円、平均日商67万8000円)を超え、26年2月期の第1四半期時点では、平均日商が対前年同期比3%増の69万円と過去最高を記録。セブン‐イレブン・ジャパンの69万1000円(25年2月期)とほぼ同等の水準となっている。
好調の要因について、糸数社長は物価上昇に伴って売価が上がったことによる売上の伸長や、観光業の復活が影響したと説明。また、沖縄特有の状況として、円安により米軍基地内で買物するより安価に購入できるということで、米軍基地周辺の店舗で売上が大きく伸びたことも影響したと語った。
しかしそうした外部要因以上に、かねて徹底してきた地域密着の戦略が奏功したところが大きいという。

消費者との心理的距離、近づける施策に注力
沖縄ファミリーマートが手がける地域密着の戦略とはどのような内容なのか。同社が重視するのが、消費者との「物理的距離」と「心理的距離」の近さだ。
まず物理的距離としては、経営戦略上、店舗数と立地を強く意識する。単純に、店舗数が多ければ必然的に来店客が増えてシェアが拡大するからだ。そのために出店戦略においては、県内各エリアで、多くの来店が見込める好立地の物件の発掘に力を注いでいるという。
一方の、心理的距離を詰めるために取り組んだのは、沖縄ファミリーマートとしてのブランディングだ。数年前に「ローカライゼーション」を強化し始めて以降、「地域にド密着」というロゴを掲げてテレビCMでの発信に注力。
また、「ファミンチュ」というワードも打ち出した。沖縄ファミリーマートすべての従業員、店舗スタッフに加え、ファミリーマートを好んで利用する消費者も含めて総称したものだ。こうしたキャッチーなロゴやワードで沖縄に根差したチェーンとして、ファミリーマートへの親近感を持ってもらえるようにした。
自治体とも手を組んだ。那覇市を皮切りに、沖縄市、うるま市と期間限定で連携。「地域ド密着プロジェクト」を掲げ、市内の名店とのコラボレーションや特産物の活用による商品開発のほか、子供食堂への寄付などの子供支援活動、地元の祭りへの協力、スポーツイベント開催といった地域貢献活動も行っている。
糸数社長は「地域に寄り添って徹底してきたローカライゼーションが地元で高く支持されてきた。ファミマが一番好き、という感情を持ってもらうための戦略をあの手この手で進めることで、ファミマファンが着々と拡大している」と手応えを語る。


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