コーナン疋田直太郎社長、今期から新中計がスタート 将来を見据えた基盤固めに注力

コーナン商事(大阪府)が、新たな成長ステージへ踏み出した。同社は主力のホームセンター(HC)業態に加えて、プロ業態「コーナンPRO」の積極的な出店で好調な業績を維持。その勢いのまま、新たな数値目標を掲げた第4次中期経営計画を今期からスタートさせた。今後、どのような成長戦略をとるのか疋田直太郎社長に聞いた。

新中計の重点7項目

―今年4月に新しい中期経営計画を発表しました。その背景をお聞かせください。

コーナン商事疋田直太郎社長
疋田直太郎(ひきだ・なおたろう)
●1956年10月生まれ。79年4月コーナン商事入社。87年4月取締役店舗運営部長。89年4月常務取締役事業本部長。91年3月取締役副社長。2002年5月代表取締役副社長営業統括。13年11月代表取締役社長(現任)。19年6月建デポ代表取締役会長(現任)。23年6月ホームインプルーブメントひろせ代表取締役会長(現任)

疋田 今期からスタートした新中計は第4次に当たる。2021年度から5年間を期間とする第3次計画に取り組んでいたが、あと1年を残すところで仕切り直した格好になる。

 売上高については当初目標の5000億円に対し、25年2月期の営業収益が5014億円と、1年前倒しで達成できた。しかし、利益面は資本効率性などに課題が残り、目標との乖か いり離があった。円安に伴って原価が上昇、粗利益率を十分に確保できなかったのも大きな要因だ。

 そこで現状に合わせた成長戦略と数値目標をあらためて策定したのが第4次計画である。インフレや消費者の行動といった外部環境の変化も踏まえ、練り直した。

―具体的な計画の概要はどのようなものですか。

疋田 「出店戦略」「商品戦略・価格戦略」はじめ、7項目を重点戦略としている。前計画との比較では、お客さまにさらなる利便性を提供する「EC×店舗戦略」、多くの方にコーナンのファンになっていただく「ファン化戦略」、さらに「物流戦略」「オペレーション戦略」「人材経営」を加えているのが特徴だ。最終年度の28年2月期に目標とする経営数値は、売上高5600億円、粗利益率37.98%、営業利益290億円に設定した。

 期間は3年間で、次なる成長に備える期間と位置付けている。景気や為替変動、競争環境など、さまざまな要因を想定すると、将来を正確に見通すことは難しく、目標としては控えめに設定した。とはいえ決して容易にクリアできる数値ではないと気を引き締めている。

―お話からは謙虚にビジネスに臨む姿勢を感じますが、前期は増収営業増益。業界の中では非常に順調な数値を残しています。

疋田 ありがたいことに、今期に入っても業績は比較的順調に推移している。その中で、新しい計画は、次なる成長ステージへ踏み出すための基盤づくりのため策定した。この計画を確実に実行することで、当社がめざす姿としている「誰からも愛される、日本を代表する住まいと暮らしの総合企業」の実現に向け努力していきたい。

PROの出店は今こそチャンス

コーナンPRO
成長をけん引しているPRO業態はまだまだ出店余地がある

コーナンPRO

―25年2月期の既存店売上高は対前期比1.9%増で、業界平均の0.3%減と比較し高い水準を維持しています。その要因について教えてください。

疋田 毎年、「ホームセンターコーナン」とプロ業態の「コーナンPRO」の両方を出しているが、出店後に業績が安定しているのはプロ業態。すべて黒字というわけではないが、3年たてばほぼ採算ベースに乗る感触を得ている。

―好調の理由は何ですか。

疋田 プロ市場はまだ競争の程度が緩やかだからだろう。同業各社もプロに力を入れてはいるが、まだ店舗数が少なく、至近で競合するケースはそれほど多くない。

 今は拡大余地が大きかった20年前のHC市場の状況に似てい。当時、HCの多店舗化ではライバル企業に後れを取り、当社は指をくわえて見ている状況だった。今回、同じ失敗を繰り返さないよう、スタートダッシュのつもりで出店している。

 HCと比べてPROは1店舗当たりの出店コストが低く、さらに運営にかかる販管費も抑えられる。ただ立地は重要なため、慎重に見極めながら店舗数を増やしていく。最近は店舗の小型化により損益分岐点を下げ、早期に黒字化する手法にもチャレンジしている。なお今年度の出店計画は、PROが約20店舗に対し、HCが約10店舗の比率になる計画だ。

―出店余地はまだまだありそうですか。

疋田 プロ業態は、建設に携わる職人、事業者が一定数ある地域で成立する。そう考えると、出店できるのは関西、関東のほか、地方都市では県庁所在地までだとみている。たとえば九州は福岡市中心になるが、大分市、熊本市などでも数店舗程度なら出せるはずだ。

―プロ業態では「コーナンPRO」のほか、グループ企業による「建デポ」「HIヒロセPRO」など複数のブランドがあります。

疋田 各地の状況を見ながら、それらのブランドを使い分け、店舗網を広げる。実はコーナンPROとHIヒロセPROは、すでに棚割りを統一しており、仕入れ先、価格政策も同じ。ただ屋号は地域との相性があるため、九州の熊本県、大分県、宮崎県あたりは知名度が高いHIヒロセPROブランドで出す計画だ。建デポは会員制卸売業なのでビジネススタイルが違う。関東、関西の物件を見ながら投じていく考えだ。

 

続きはダイヤモンド・ホームセンター誌でご覧いただけます。

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