第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは

近年、「フードホール」と称した飲食施設(ゾーン)の開業が相次ぐ。そもそもフードホールとは一体何なのか。そして、フードホール成功のカギはどこにあるのか。ショッピングセンター(SC)におけるフードホールの役割や存在意義について、今回は考えていく。

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相次ぐ飲食ゾーンの誕生 2024年は出店増加

 2025年4月、福岡県の博多エリアにあるONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)にフードゾーン「天神のれん街」「iiTO TENJIN」がオープンした。7月には、同エリアのキャナルシティ博多に「KUOHKA(クオウカ)」も開業。一帯は都市再開発プロジェクト「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」によって新規開業が続いており、新たな飲食ゾーンが誕生している。224月に天神ビジネスセンターにオープンした「イナチカ」も相変わらずのにぎわいだ。

 24年開業のSCに出店した店舗数割合を見ると、飲食が27.5%となり、衣料品の10.3%を遙かにしのぐ(図表1)。この数字は面積ではなく店舗数なので肌感覚とは異なるが、経年で見ると明らかに増加している。コロナ禍の影響を最も受けた飲食店だが、高齢化も手伝い飲食業の勢いは増している。考えてみれば、「食べる」「飲む」は、インターネットには代替できないコト消費の代表格だろう。

技術革新で多様化する運営形態

 これまで飲食店では、テーブルに着席した客に注文を聞くテーブルオーダーが当たり前だった。その後、ファストフードやフードコートが普及したことで、お客が店頭(カウンター)で注文と支払い、商品の受け取りから席への運搬まで自ら行うキャッシュオンデリバリーのスタイルが浸透した。結果、店内の客席スタイル(占有席)から複数の店舗で利用する共用席が広がり、多様な飲食施設が開発された(図表2)。

図表2 飲食店の客席と運営方式

客席と注文

オーダー方式

Table Order

Cash on Delivery

客席

店内(占有)

一般的な飲食店

カフェやファストフード

店外(共有)

モバイルオーダー

フードコート

 近年の技術革新による飲食店の自動化と省人化は、接客ロープレや販促活動など、アナログな労働集約型産業のSCの中にあって、進歩が抜きんでている。事前予約や順番待ちがシステム化され、注文もタブレットや自らのスマホで行い、料理の配膳もロボットが行う。支払いもタブレットで完結するなど、飲食店の技術革新には目を見張るものがある。

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