初期投資約1400万円を約2.5年で回収! 「お酒の美術館」FCが熱視線を浴びるワケ

NBG(京都府)が運営するバー「お酒の美術館」は、全国で約100店舗を展開するチェーン型バー業態である。「バー文化をもっと身近に」という理念のもと、だれでも気軽に立ち寄れる空間をめざして誕生した。火を使わないオペレーション設計によって出店コストを抑え、8坪・少人数体制でも高収益を実現する仕組みを確立。初期投資1000万〜1400万円で2.5年の投資回収を可能にするモデルとして注目を浴びている。

メニューはワンコイン(500円)からで、チャージ料を一切設けていない

「火を使わない」設計で狭小な区画への出店が可能に!

 「お酒の美術館」は、“だれでも気軽に立ち寄れるバー”をめざして誕生したチェーン型のバー業態である。従来のバーが持つ「敷居の高さ」「価格の不透明さ」「一見客の入りづらさ」といったハードルをなくし、日常生活の延長線上で利用できる「カジュアルバー」をコンセプトとしている。

 メニューはワンコイン(500円)からで、チャージ料はない。流通量の少ないオールドボトルや希少ウイスキーも多数ラインアップし、「お酒の美術館」でしか飲めないオリジナルウイスキーも提供している。こうしたメニュー構成によって、日常的に利用するお客から酒にこだわる愛好家まで、幅広い客層を取り込んでいる。

 NBGが「お酒の美術館」の1号店を開いたのは2017年2月25日のことだ。同社社長の冨士元明仁氏が掲げた理念は、「バー文化をもっと身近に」というものだった。「スターバックス コーヒー」などカフェチェーンが全国に広がる一方で、当時はバーのチェーンは存在しなかった。冨士元氏は「だれもが日常的に立ち寄れるバーをつくれないか」と考え、FC(フランチャイズ)を中心としたバー「お酒の美術館」の展開を開始した。

 特徴的なのは、フードメニューを最小限にして、火を使わないオペレーションを徹底している点だ。この仕組みが、狭小区画への出店を可能にし、結果として全国展開を推進する基盤となった。

 一般的な飲食店では、ガス設備や排気ダクト、防火区画などの設置が義務づけられ、厨房を設けなければ営業許可が下りない。一方で「お酒の美術館」は、ガスも直火も一切使用せず、既製ボトルの開封提供と簡易カクテルの調製が中心であるため、電気式機器のみで営業が成立する。これにより、消防法上は「火気使用設備なし店舗」として扱われ、ダクトや防火区画が不要になるほか、建築・消防・保健所の審査も大幅に簡素化できた。厨房面積の制約もなく、カウンター内の小さな作業区画だけで営業許可を取得できる。火を使わないことで工事費を30〜50%削減でき、出店承認や工期も短縮された。結果として、狭い区画にも柔軟に出店できるフォーマットを確立したのである。

 現在、「お酒の美術館」は京都・大阪・東京など大都市圏を中心に全国で約100店舗を展開。繁華街の路面店のほか、駅構内や地下コンコース、空港、商業施設内、コンビニ内など、さまざまな立地に出店している。

初期投資1000~1400万円を1.5~2年で回収!

 「お酒の美術館」は、FC型の出店を基本としており、直営店舗は現状1店舗のみだ(今後の直営店の出店は未定)。原価率約23%、償却前利益36%という高収益体制モデルで、月商は180万円前後、客単価は約2300円を目安とする。FL比率(食材費・人件費が売上に対して占める割合)は人件費25%、フード23%と約48%に抑え、損益が崩れない仕組みを徹底している。

 店舗は平均8坪規模で、店長1人、もしくはそこにアルバイト3名程度を加えた少人数体制を基本とする。火を使わないオペレーションによって人員・設備負担を抑え、1店舗当たりの採算が安定しやすい構造を築いた。

 初期投資は1000万〜1400万円(加盟金・研修費・内装工事費などを含む)とコンパクトで、ロイヤリティは月額固定制を採用している。投資回収期間は1.5〜2年。これまでに半年で回収した例もあるという。

 FC加盟希望は全国的に増加傾向にあり、「すぐに採算が取れる仕組みなので、とくに地方都市では『駅前の空きテナントを生かしたい』という相談が増えている。加盟オーナーには、不動産業や小売業など他業種からの参入が多く、副業や事業転換を目的としたケースが目立つのが特徴だ」と冨士元氏は説明する。

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