「そもそも…」と問い直すことからマーケティングは始まる
そもそも、マーケティングを実行するにはお金も必要
さて、マーケティングには不可欠なものがあります。ズバリ、お金です。
以前、ある地方の食品企業から相談を受けた際に「市場データを買うのに100万円かかるなんて。お金がないから無理だ」と社長から言われたことがあります。しかし、当の本人は本当にお金がないかというと、高級な社用車で出勤しているわけです。「お金がない」のではなくて、「お金を使うつもりがない」ように感じました。
「そもそも」、マーケティングプランを回していくにはどうしても、市場状況の把握、プラン実行、そして効果検証という3つの仕事への一定額の投資は避けられず、これがなければどのような優れたマーケティングの専門家も役に立ちません。
「アイデアさえあればなんとかなる」とか「汗をかいて情報を集めよう」いうのはきれいごとで、ビジネスの規模に応じたPDCAへのバランスのよい投資は不可欠です。マーケティングを強化するというならば「投資」という一時的には負担にも見える費用に対しても目を背けないようにしていきたいものです。

そもそも、自社のマーケティングは「機能」しているか?
長らく多くの日本企業では、マーケティング部門という”箱”をつくってマーケティング機能の強化をしてきた「つもり」になっていたような気がします。20世紀後半ごろには「日本の企業は全員にマーケティングの考え方が染み付いているから、マーケティング部門は必要なかった」という学者の見立てもあったとかなかったとか。ただ、どちらにせよ「マーケティング」と言葉にしたとき、実はその中身はあいまいだったことも多かったのではないでしょうか。
マーケティングの主な業務はいわゆる4P――商品(Products)、価格(Price)、販促(Promotion)、流通施策(Place)の戦略と企画の立案に集約されます。立案とは先述したようにPDCAすべてを回すことで、それができて初めて、「マーケティングが機能している」と言えるのです。
そして、そうした機能を管轄する部門をつくるときに、「マーケティング部門」という名が掲げられるのです。つまりマーケティング部門をつくることがマーケティング機能の強化に必ずしもつながるわけではありません。
マーケティングという領域は、広く深い世界だと私は考えています。
しかし、決して複雑なものではありません。次回はマーケティングの機能を果たす、マーケティングの仕事をするうえでの「スキル」について考えてみたいと思います。
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