「そもそも…」と問い直すことからマーケティングは始まる
これまで雑誌「ダイヤモンド・チェーンストア」で、「いまさら聞けないマーケティングデータの読み方・使い方」という連載を4年近く担当してきましたが、今回から「DCSオンライン」に引っ越すことになったので、この機会にマーケティングにかかわるトピックを広くとらえようと考えています。
皆さんもご存じのとおり、多くの企業や人が「マーケティングを強化」とか、「ブランディングに取り組む」とか、「データ活用が必須」などとおっしゃっていて、場合によっては決算報告の場で「戦略」として宣言する企業もあります。 なんとなく、「マーケティング」と言えばビジネスが成長するようにも聞こえなくはありません。
しかし今回から始まる連載「マーケティングそもそも論」では、できるだけそうした風潮とは一線を画して、「そもそもビジネスを持続していくには何をどう考えようか?」というシンプルな視点で、マーケティングのあり方を読者の皆さんと一緒に思考していきたいと思っています。まず初回は、連載タイトルにもある「そもそも」という言葉をキーワードに、マーケティングについて考えていきます。

「そもそも…」が議論をシンプルにする
筆者はマーケティング領域のコンサルティングや調査分析のプロジェクトに関わることが多いのですが、クライアントの方の中には、コンサルタントを前にすると難しい言葉や概念を持ち出されて、複雑なことを調べて提言してほしいとおっしゃる方が多いように見受けられます。
筆者からすると「そんなこと調べて意味あるんかいな?」と思うことも少なくないのですが、とはいえむげに否定するわけにもいかないので、そういう時には「そもそも、やるべきことはなんでしたっけ?」と聞くようにしています。
これは以前、筆者の同僚が便利だと言って使っていた言葉なので拝借することにしたのですが、実際に「そもそも…」と切り出すと、議論がかなりシンプルになることが多かったように思います。
そもそも、マーケティングは魔法ではない
何十年も前から、マーケティングを「導入する」とか「強化する」といったことを標榜する企業は多く存在していた気がします。 そこには「マーケティング組織が強くなれば、ビジネスの持続成長につながるのでは」という淡い期待があったようです。
マーケティングの定義についてはここでは議論しませんが、確実に言えるのはマーケティングは魔法ではありません。マーケティングの専門家がいればすぐにヒット商品をたくさん生み出せるわけでも、すぐ売り切れ続出の仕掛けをつくれるわけではありません。
おそらく、真のマーケティングの専門家が得意なのは、事実を見て「効きそうな」打ち手を試して修正すること、つまりシンプルにPDCAを回すことです。なので、本来は「地味な仕事にも打ち込める」というのが、マーケターの資質なのです。
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