急拡大するリカバリーウエア市場を攻略する
代表ブランドの特徴を比較
現在、国内リカバリーウエア市場には多彩なプレーヤーがひしめき合っている。主要ブランド・製品をいくつか挙げ、その特徴を比較してみよう。
❶TENTIAL
「BAKUNE(バクネ)」シリーズという睡眠時専用のパジャマ型リカバリーウエアで、市場をけん引する代表格。特殊繊維による遠赤外線効果を全面に打ち出し、血行促進・疲労回復のエビデンスを示している。一般医療機器として届け出済みの製品であり、高い信頼性と実感価値を訴求する戦略で急成長。価格帯は上下セット2万~3万円前後の高価格帯だが、質の高い睡眠を求める層に支持されている。
❷ベネクス
神奈川県発のパイオニア企業で、独自開発の「PHT繊維」を使用した製品群を展開する。創業は05年と古く、この分野の草分け的存在。素材にプラチナなど鉱物を練り込んだ生地によって遠赤外線効果を生み、「休養を科学するウエア」として各種デザイン・用途のリカバリーウエアを販売する。多くのスポーツ賞を受賞しておりブランド信頼性も高い。価格は上下セットで2万円程度からとプレミアム寄りだが、幅広い世代の愛用者を持つ。23年には主力商品を一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」として正式に届け出ており、機能を強調する姿勢を鮮明にしている。
❸コラントッテ
磁気健康ギア大手コラントッテが手掛ける新ブランド「RESNO(レスノ)」。従来から医療機器認証の磁気ネックレス等で実績を持つ同社が、そのノウハウを生かし衣類型製品に参入した。衣服内に配置した磁石の力で血行を促進するアプローチが特徴で、肩や腰のコリ改善をねらったアイテムを揃える。価格帯はトップス・ボトムス各1万円弱程度。磁気治療器具としての確かな裏付けを求める層にアピールしている。
❹ワークマン
コストパフォーマンス抜群のリ下揃えても3800円に抑え、大量生産による低コストを武器に市場を急速に広げている。従来高額だった疲労回復ウエアを一気に大衆化しつつあり、競合各社にとって脅威となっている。
❺AOKI
紳士服大手のAOKIは、スーツ販売の知見を生かしビジネスパーソン向けのリカバリーウエア「リカバリーケアプラス」を投入した。パジャマ兼部屋着として着用できるホーム&スリープウエアで、22年ごろから自社EC限定で販売開始。綿混素材にセラミック練り込み繊維を用いた生地で遠赤外線を放射し、血行促進による疲労回復効果をうたう。価格は上下セットで1万円前後と比較的手ごろで、スーツ客層へのアプローチとして店舗ではなくオンライン中心に展開している。人気キャラクター「スヌーピー」とのコラボデザイン商品を発売するなど、ファン層拡大の工夫も見られる。

❻その他のプレーヤー
海外スポーツブランドのアンダーアーマーも近年「リカバリー睡眠着」を発表しており、米国でNFL選手らの間で注目を集めた機能素材を投入している。
また、美容・健康機器メーカーのMTGは独自の8種鉱石配合繊維を使ったリカバリーウエア「ReD」を開発して展開中である。
このように異業種からの参入も相次いでおり、各社が独自技術や素材、ターゲット層の差別化によって市場競争が激化している。圧着タイプのコンプレッションウエアから就寝用のゆったりパジャマタイプまでラインアップも広がり、消費者は自らのニーズに合った一着を選べる環境が整いつつある。
急拡大を続けるリカバリーウエア市場は、今後も健康志向の追い風を受けて発展が見込まれる。日本人の間では慢性的な睡眠不足や疲労蓄積が社会問題化しており、それを解決する手軽なソリューションとして「着る休養」のニーズは高まり続けるだろう。
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