急拡大するリカバリーウエア市場を攻略する

国内リカバリーウエア市場が急拡大している。アパレルメーカーだけでなく、ワークマン(群馬県)など小売企業も参戦し、市場を活性化させている。リカバリーウエア市場のトレンド、各社の企業戦略について解説する。

4年間で1.7倍に成長

 リカバリーウエアとは、着用するだけで血行促進を図り、疲労回復や筋肉のコリの緩和をサポートする機能を持つ衣服の総称である。厚生労働省が2022年に新たに「家庭用遠赤外線血行促進用衣」という一般医療機器カテゴリーを制定し、適切な製品にはその届け出がなされている。従来のリラックスウエアやパジャマと一線を画す「着る医療機器」としてテレビCMなどで目にした読者もいるだろう。

 近年このリカバリーウエアが注目される背景には、働き方の多様化や生活ストレスの増加に伴う睡眠の質向上や疲労回復への関心の高まり、そしてウェルビーイング志向のブームがある。健康意識が高まる現代において、良質な休養への投資としてリカバリーウエアへの需要は急増している。

 国内のリカバリーウエア市場はここ数年で急成長を遂げている。一般社団法人日本リカバリー協会の推計によれば、「休養・抗疲労」を目的とした広義のリカバリー市場全体規模は19年の約3.9兆円から23年には5.4兆円へと約1.4倍に拡大し、30年には14兆円規模に達する見込みだ。中でも衣料関連分野の伸びが著しく、19年から23年に約1.7倍に拡大したとの報告がある。リカバリーウエアはこの市場拡大をけん引する注目分野となっている。

 元来はアスリートの疲労回復用途で知られたが、その効果が広く認知されるにつれユーザー層は拡大している。スポーツ愛好者のみならず、デスクワークによる慢性的な肩こりや疲労に悩むビジネスパーソン、高齢者や介護従事者の身体的ケア、さらには日々の睡眠不足を解消したい一般層まで、年代・職種を問わず幅広い層が取り入れ始めている。

業界をけん引するスタートアップ

業界をけん引するスタートアップ企業のTENTIAL
業界をけん引するスタートアップ企業のTENTIAL

 業界をけん引する企業の1つが、今年東証グロース市場に上場したスタートアップのTENTIAL(東京都)である。同社はスポーツ選手のコンディショニング支援を起源に18年創業し、20年末にクラウドファンディングで発売した睡眠時着用パジャマ「BAKUNE(バクネ)」シリーズが大ヒットした。

 上下セット約2万6000円という強気の価格設定ながら、特殊セラミックス粉末を練り込んだ独自繊維「SELFLAME®(セルフレイム)」による遠赤外線効果で血行促進・疲労回復を図るという科学的エビデンスを打ち出し、同製品は一般医療機器としての認証も取得したことで信頼性を高めた。

 発売から約4年で累計販売100万着を突破し、同社の24年1月期売上高は約54億円と2年前の5倍超に急成長している。25年1月期も売上高119億円(対前期比137%増)と拡大を続けており、リカバリーウエア需要の高まりを象徴する存在となった。

 販売戦略面では、自社公式オンラインストアを中心とする直販ECで消費者との接点を築き約7割をオンライン経由で売り上げている。高機能ゆえ店頭でのよさの体感も重要ととらえ、東京丸の内や虎ノ門ヒルズに直営店を構えるほか、家電量販店「ビックカメラ」や紳士服店「P・S・FA」(パーフェクトスーツファクトリー)など異業種小売との提携販売にも乗り出し、幅広い販路を開拓している。約70%という高粗利率を維持しつつ今後は海外展開も視野に成長を図る姿勢で、文字どおり同社名の由来「ポテンシャル」を感じさせる企業だ。

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