第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定
人口が増加していた時代に誕生したショッピングセンター(SC)は、マーケティング理論の王道「市場セグメント」と「標的市場(ターゲット)の設定」を拠り所としてきた。しかし、人口減少と高齢化の進む時代、セグメントした標的市場は時間の経過とともに縮んでいく。では、どのようにSCのターゲット設定をすればよいのか。その話を進める前段として今号では、ターゲット設定の基礎を解説したい。

ターゲット設定で大切なこと
SCのターゲット設定は、「メインターゲット」と「サブターゲット」の2つとする。メインとは中心となる標的市場であり、確実に存在し、SCを体現する人物像である。一方、サブとはメインを補完し、売上高を下支えする分母であり、メインよりサブの方が市場は大きい。しかし、「メインターゲットは20代30代の働く女性」「サブターゲットは女子大生」では、サブのボリュームは少ないことは明白だろう。
SCターゲット設定の3つの類型
先述の「メインターゲットとサブターゲット」のようにSCのターゲット設定では、中心的存在と支援的存在の2つを常に考えるが、その代表例は以下のとおりである。
| 階層型ターゲティング(市場の理解と深耕) | |||
| 分類 | 定義 | 例 | 役割 |
| メインターゲット | SCの主要な来館・購買層。施設の方向性やMD構成の中心的存在となる | 平日昼間に来館する近隣商圏の子育て世代ファミリー | 売上・来館数の中核を担い、施設の価値を体現する存在、来館頻度・購買率が高く、施設との親和性が高い |
| サブターゲット | メインを補完・拡張する周辺層。将来的な育成対象にもなる | 週末に来館する郊外の若年カップル、観光客、通勤者、アクティブシニア | 潜在的なクラスター・特定施策の対象・季節変動の補完役、来館頻度は低め、特定条件で来館購買する可能性あり |
この階層型ターゲットにおけるメインターゲットは実際に存在するものの、そこに偏ると拡張性が失われるため、サブターゲットの動向を定期的に分析し、将来的なメインターゲットとして育成する視点が重要となる。
| ギャップ型ターゲティング(理想と現実の認識と市場拡大) | |||
| 分類 | 定義 | 例 | 役割 |
| イメージターゲット | SCが「こう見られたい」「こういう人に来てほしい」と設定する理想像、幻影、偶像 | 都心的で洗練された30代キャリア女性(SCの広告モデル)、SCが勝手に作りだしたペルソナ | ブランド価値・空間演出・広告訴求の方向性を決定する、感性・価値観・ライフスタイルを重視した理想的な人物像。必ずしも来館していない |
| リアルターゲット | 実際に来館・購買している現実の顧客層 | 実際に来館している近隣の子育て世代ファミリーやシニア層 | 売上・来館数・施設運営の実態を支える来館頻度・購買率が高く、施設との接点が多い。実用性・利便性重視 |
このギャップ型ターゲティングは、理想像(イメージ)と実態(リアル)との間にあるギャップを埋めることで施設のブランド力・来館促進・施策精度を高める手法だが、大切なのは、「誰に見せたいか」と「誰が実際に来ているか」を分けることであり、広告やMDや販促のバランスを注視する必要がある。
いちばんの注意点は「イメージターゲット」は実際には存在しない場合も多いということだ。SC側がそのようなイメージ(幻影)に引きずられ、実際の商圏ニーズから離れるリスクを内包する。
| 影響力型ターゲティング(市場創造と顧客の活性化) | |||
| 分類 | 定義 | 例 | 役割 |
| リードターゲット | トレンドや価値観を牽引する層。情報感度が高く、発信力があるオピニオンリーダー | 20代女性インフルエンサー層、感度の高い子育てママ層 | ブランドの「顔」、施設の方向性を象徴する存在、新しい体験・価値に敏感。SNSや口コミで影響力あり。 |
| ボリュームターゲット | 主に購買・来館を支える多数派。安定的な売上を生むフォロワー | ファミリー層、シニア層、通勤・通学者など | 実際の売上・来館数を支える基盤、実用性・価格・利便性を重視。習慣的な来館傾向 |
この影響力型ターゲティングは、「誰がSCの価値をつくり、誰がそれを支えるか」という構造を明確にし、この2者の「発信施策と受容施策のバランス」を設計することで、施設の活性化と持続性の両立をめざすというもの。注意したいのは、「リードターゲット」とはあくまで市場を牽引するトレンドリーダーやオピニオンリーダーであるという点だ。
このように、SC事業で起こる典型的なエラーは、存在しない理想像をペルソナとして中心のターゲットに据えてしまい、商圏市場や消費市場から乖離することにある。ターゲットはあくまで「SCを支える存在」であり、その実態を見失わないことが大切である。