大パラダイム変化のアパレル KPIは「製品軸」から「顧客軸」へ変わる

ブランド力を強化する最強、最高のPR手法

 本論考の趣旨は通販企業の戦略を解説することでない。数多くの企業が体力をすり減らして小さくなったパイを奪い合っている構造から逃れるため、リアル店舗であっても、商品軸から顧客を軸としたKPIに直せということにある。もう少し、アナロジカルに説明しよう。通販事業が使っている「顧客データベース」は、リアル店舗で言えば「ブランド」となる。つまり、消費者をAcquisition 、「獲得」するのが、リアル店舗でいうところの「店舗」となる。

 ブランド力を強化するという話を聞けば、テレビCMやら駅構内のサイネージなどを想起する人が多いが、あなたは昨年どのアパレルがどんなCMを打ったのかを覚えているだろうか。私がやった経験からいって、最高、最強のPRとは「店舗」なのだ。したがって、なるべくトラフィックの多い場所にフラッグシップショップを出す、これこそが最強のプロモーションである。

 事例は沢山ある。外資SPAやユニクロが、地価が最も高いところにデカいビルを建てるのはそのことを知っているからだ。また、過去に通販をやっていたDoClasse(ドゥクラッセ)の林恵子社長も、このように言っている。「ブランド力が強いファッション企業でリアル店舗を持っていないところはない」、と。

 ECだけで戦って成長している事例としてSHEINがあるが、日本にもショールーム機能を持たせた店舗を東京と大阪に立ち上げ、4000人を並ばせたことは記憶に新しい。「Amazon」も「楽天市場」もショールーム機能を持たせたリアル店舗を米国や日本に出しているし、中国で成功している中小アパレルを見ても一等地にリアル店舗を建てることでブランド力を高め、物販の60%が通販という中国のアリババグループから特別な権利をもらっている。これに対して、失敗している企業は、大した差別性も持たせずいきなりECを始めるが、われわれ消費者はAmazon、楽天、ZOZOで十分なのだ。

 このように、人口減少に加え、所得が下がっているマーケットで戦うためには、フロー型のビジネスからストック型のビジネスに変えるべきなのだ。そして、生き残っている通販企業の、とくに離脱防止施策をよく研究し、自社のファンになっている顧客をパーソナルに追随する。これが、新しい時代のKPIの考え方なのだ。

 繰り返し言おう、これからのアパレル企業、アパレル小売に必要なアジェンダは、「M&A」「デジタル」「オフショア(東南アジアへの販売)」の3つである。

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