新潟日報が編み出した電子版拡販に頼らないデジタルの新たな稼ぎ方の裏側
新潟日報社が保有する約16万件のID資産を起点に、地域事業者の持つ顧客情報と掛け合わせることで、マーケティングや商品開発に活用できる仕組みを構築する「NIIGATA Smart」。人口流出が進む新潟県において“共創”による地域活性化をめざす新潟日報デジタル・イノベーション代表取締役社長CEOの星野太希氏に同社の事業方針を聞いた。
地方企業の連携を強化する、地方新聞社としての役割

─はじめに御社設立の背景についてお聞かせください。
星野 私は2001年に新潟日報社に入社し、今年で25年になります。技術系として新聞制作に携わっていましたが、時代の流れとともにデジタルメディア部門へ移り、ニュース配信や広告運用などを担当してきました。
しかしデジタル媒体は収益化が難しく、電子版やメルマガ登録に使う「新潟日報パスポート」というIDを活用し、収益化施策を模索していました。
当社設立の経緯はここにあります。社内でデジタル事業化を進めようとしていましたが、ITに関する理解やスキルが不足し、前に進みませんでした。そんな中、BIPROGY(ビプロジー)社と意見交換をする機会があり、自社のIDデータ、いわゆるファーストパーティーデータの活用だけでは限界があると実感しました。
地域の企業が持つさまざまなIDと掛け合わせることで顧客解像度が上がり、マーケティングにも生かせる。
BIPROGY社は、個人が同意したうえでデータを安全に流通させる仕組みを持っており、それを活用すれば地域全体の経済を潤すような仕組みがつくれます。地方新聞社として、地域企業と連携して経済を支える役割があるとあらためて感じ、新会社設立を決意しました。
─事業のスタート時期と、事業方針についてお聞かせください。
星野 この事業は2025年8月にスタートしました。新潟県は200万人規模の都市圏ですが人口流出が激しく、単一企業では地域全体を支えるのは難しいため、競争ではなく協力して社会をつくる必要があると考えました。
当社は、自社のサービスと地域企業との連携を強化し、郷土愛や生活の利便性を高め、地域全体の価値を再構築していきたいと考えています。
