11~12月商戦でどんな価値を提供するか? コスパやタイパの根底にある「非日常性」

11月下旬のブラックフライデーから年末年始へと続く商戦を何と呼べばいいでしょう? 欧米なら「ホリデー商戦」ですが、日本ではボーナス支給による消費意欲がベースにあるように見えます。つまりは「ボーナス商戦」ですが、どこか言い足りません。「盆と正月がいっぺんに」ではありませんが、クリスマスと大晦日・三が日が続くこの時期の祝祭ムードは格別で、食品小売のかき入れどきになるのも納得です。ケーキやおせち、さらに諸々の祝祭ディナーを通じて、小売が提供してくれる価値とは何か。千差万別の中にも、一つの軸があるようです。

イオンはトップバリュを多用したコスパ・タイパの食卓を提案

11~12月商戦の「令和スタイル」

 「11月の催事はボジョレー解禁くらい」と言われたのは昔の話です。ブラックフライデーは、ボーナス商戦の先駆けとして浸透しました。これによって、11~12月商戦の「令和スタイル」が完成したと言えそうです。

 もっとも、11~12月商戦のスタートは、むしろブラックフライデー以前にさかのぼるかもしれません。すでにクリスマスケーキやおせち予約の真っ只中、歳暮ギフトも年の瀬の「集いのグルメ」が主要テーマになっていて、業界は11月に入ると祝祭ムードに溢れています。

 スーパーマーケットでは、この時期に年末年始のテスト販売も始まります。クリスマス向け総菜などを並べ、本番前に商品の存在を刷り込んでいくのです。年末年始の客数は秋から仕込むというわけで、ムードだけでなく実際に商戦は動き出しています。

 ブラックフライデーはセール企画ですが、食品に限ると大容量のパーティー向け限定品が展開される印象です。また、名前に引っ張られて黒色の商品が増えるのは、日本独自の傾向かもしれません。

 黒くなった売場がクリスマスカラーに置き換わると、ホリデー商戦の本番です。物価高のさなか節約意識はあったとしても、祝祭ムードは存分に楽しみたいものです。

この時期に黒い食品が増えるのは日本ならでは(セブン-イレブン・ジャパンの限定商品)

 ただ、令和に入って天皇誕生日がずれたことにより、クリスマスは曜日変動の影響が大きい催事になりました。今年、ピークの24日は水曜日。週末から最も遠い「平日クリスマス」となります。

平日クリスマスの打開策とは

 平日クリスマスの課題は、当日の準備に時間をかけられないことです。翌日も仕事が控えており、時間的な制約があります。

 業態特性が大きく異なる「イオン」と「セブン-イレブン」ですが、今年のクリスマスに関しては、どちらもタイパを打ち出しました。限られた時間で、準備に手間をかけずにパーティーの食卓を整えようという趣旨です。

 イオン(千葉県)グループは、「トップバリュ」を活用したディナー&スイーツに力を入れます。丸鶏をオーブンで加熱するだけのローストチキンシリーズ、菓子の既存品をアレンジしてつくるスイーツレシピ、アレルギー対策商品で作るケーキレシピなどを提案します。また、ホットミルクにチョコレートボールを入れ、溶けると中からマシュマロが溢れ出てくる「チョコボム」のようなトレンド商品も投入します。

 セブン-イレブン・ジャパン(東京都)は、仕事帰りに用意できるクリスマスディナーを提案します。限定仕様の骨付きチキン、オードブルセット、ピザのほか、予約ケーキとは別に個食~2・3人用のケーキをクリスマスイブに展開します。

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