岩手県盛岡市で、あの文学者の足取りを追いつつそばを楽しむ

各地の歴史や文化をひも解き、さらに食を堪能する旅シリーズ──。今回、私が訪れたのは岩手県。当初、花巻市を巡ろうと考えていたが、ある事情で予定を変更、盛岡市に場所を移した。著名な人物を数多く輩出している同県の魅力に触れた後、老舗のそば屋で食事をするというお話である。 

岩手県盛岡市で評判のよいそばを食べる

クマ騒動の影響で盛岡へ移動

 岩手県にやってきた。宿泊地に選んだのは花巻市。花巻といえば、米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の出身地。駅周辺を歩くだけでも、あちらこちらにポスターが貼られており、その人気ぶりがうかがえる。

 今回も観光するが、目的は大谷選手の足跡を辿ることではない。お目当ては、詩人で童話作家の宮沢賢治。実は数十年前、とある縁で花巻市に来て、賢治ゆかりの場所を巡ったことがある。今回、久しぶりに花巻に来たので、当時と同じルートを歩きたかったのだ。

 だが、やむなく計画を変更せざるを得なくなった。原因は「クマ」騒動。連日、ニュースを賑わしているが、リストに入れていた宮沢賢治記念館近くでも出たとの情報があり、悩んだ末に断念。花巻にオープンした「ロピア」にも行こうと楽しみにしていたので残念だった。

「クマ」騒動で計画を変更、盛岡市へ移動する

 次の場所に選んだのは盛岡市。県庁近くでもクマが出没したとの話も聞いたが、都会なので遭遇する確率は低いと考えた。そして約40分間、電車に揺られ移動した。

 盛岡駅近くで電動自転車を借りる。北上川を渡り、まず向かったのは盛岡城跡公園付近。周辺を当てもなく回遊し、盛岡市役所の後、東京駅の設計で知られる「日本近代建築の父」、辰野金吾による「岩手銀行赤レンガ館」を眺めた。

東京駅と同様、辰野金吾が設計した「岩手銀行赤レンガ館」を眺める。

 そしてスマホで位置を確認しながら、目的地の「清養院」へ。ここは宮沢賢治が盛岡中学時代、下宿していたお寺だ。前には「宮沢賢治ゆかりの地」と記されたプレートが建てられている。私はそこでたたずみ、当時の様子に思いを馳せていた。

詩人、童話作家の宮沢賢治が下宿していた「清養院」

 しばらくして再び自転車で走り始めた。偶然、「新渡戸稲造生誕の地」も発見する。やはり岩手は著名な人物を数多く出しているのだとあらためて感じた。

 張り切って活動したのでお腹が減ってきた。何を食べるか。検索すると評判のよいそば屋を見つけた。店名は「蕎麦喰い処 やまや」。創業は大正13年(1924年)の老舗である。私は期待を胸に、ペダルを強く踏み込んだ。

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