「香りの言語化」で酒類の購買体験を変える! AIソムリエ「KAORIUM」の実力とは

ワインや日本酒の売場で、「種類が多くて選べない」「自分の好みに合うかわからない」と悩んだことはないだろうか。こうした課題を解決し、新たな購買体験を提供するのが、セントマティック(東京都/栗栖俊治社長)のAIシステム「KAORIUM(カオリウム)」である。「香り」という主観的な感覚をAIが言語化し、「好みの味わい」や「なりたい気分」といった情報をもとに、商品やサービスと結びつけるこのシステムは、すでに全国約400の百貨店や食品スーパー(SM)、飲食店、宿泊施設に導入されている。オンライン購買が浸透する中、実店舗には「モノを売る場」以上の顧客体験が求められている。KAORIUMは売場にどのような変革をもたらすのか。セントマティックCOOの金子量氏に話を聞いた。

購入を後押しする「言葉の力」

 KAORIUMは、香りや風味を言葉で表現するだけでなく、言葉から好みの香りや風味を持つ商品を導き出す双方向型のAIシステムだ。たとえば、飲食店のテーブルや小売店の売場に設置されたタブレット端末で、「華やか」「甘い」といったキーワードを選ぶと、それに合致する酒をAIが提案する。

セントマティックCOOの金子量氏

 この仕組みの背景には、「テクノロジーと人間の感覚の関係性が変化しつつあるという認識がある」と、金子氏は話す。これまでITやデジタル技術は、主に視覚や聴覚を中心に発展してきた。一方、嗅覚の領域は技術介入の余地が大きく、非常に高い可能性を秘めているという。さらに同氏は、「言葉には、人の知覚を助ける力がある。言葉と嗅覚を組み合わせることで、商品選びの最後の一押しを担えるのではないかと考えた」と振り返る。

 この技術の核となるのは、専門家の「感性」をAIに取り入れる点にある。たとえば、日本酒ペアリングの専門家・赤星慶太氏や、ワインソムリエ・塩田典久氏といったエキスパートが、各銘柄の香りや風味を実際に評価し、感じた言葉をデータとして蓄積する。その専門的な表現を、KAORIUMWeb上の小説や漫画、アニメなどの膨大な言語データを用いて、一般の消費者にも直感的に伝わる言葉へと変換する仕組みだ。

タブレットの表示画面の例

 「タブレットに表示されるのは、人間の感性をもとに選ばれた言葉。その軸となる表現を見つけ出すのが、監修者の役割だ。彼らの主観的な評価をもとに、AIがよりわかりやすく翻訳することで、ソムリエのような接客体験を実現している」と金子氏は話す。

 

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