紳士服のAOKI、カジュアル・女性向けを強化する事業モデルに転換
紳士服業界2位のAOKI(神奈川県/青木彰宏会長兼社長)は、これまでのメンズスーツ偏重から脱し、カジュアル衣料や女性向け商品を強化する事業モデルへと転換する。ジャケットやパンツなどのキーアイテムを軸に、着回しできるアイテムを提案する体制に向けて、品揃え・接客・売場づくりを変更し、2028年度までに既存店200店を改装する予定だ。

スーツ偏重から単品コーディネート型に転換
メンズスーツ市場は縮小している。コロナ禍を機にテレワークやオンライン会議が浸透し、仕事服のカジュアル化も進んだ。一方で「何を着るべきか悩む」といった服選びのストレスも増えているという。AOKIではその解決策として、「スーティング」と呼ぶ考え方を打ち出した。
スーティングとは、上下同じ素材で統一感のある装いを指す。既製スーツだけでなく、セットアップや同社で人気の楽に着られるパジャマスーツも含めて幅広く展開する。スーティングをスタイルの軸に据えることで、ほどよい“きちんと感”を表現できるという。顧客はセットアップとして着こなすほか、ジャケットやパンツ、インナーなどを単品で使うこともできる。
この方針転換に合わせて、今秋冬物ではニットやTシャツなどのインナー類やボトムを拡充。レディース向けではトータルコーディネート提案を強化した。
接客方法も見直した。1着のジャケットに3本のパンツ、あるいは1本のパンツに3枚のインナーを提案する「ワンクロススリー(1×3)」と呼ぶ販売手法を導入。商品選びに迷わない簡単さ、シーンを選ばない気軽さ、少ないアイテムで幅広く着こなせる経済的な合理性を実現する。販売員への必要な接客教育・訓練を経て、今年8月から全店で始めた。
スーツを中心に販売する従来の方法に比べ、1品番当たりの単価は低下するが、お客1人当たりの販売点数を増やしてカバーする。
AOKIにおける現状の売上構成比はビジネスウエア7割、カジュアル1割、女性物2割。こうした施策により、10年後の35年度までにビジネスウエア4割、カジュアル3割、女性物3割への転換をめざす。カジュアルと女性物を大幅に強化し、これらの売上を現在の3倍に伸ばす計画だ。

「スーティングは、現代の多様な働き方やライフスタイルに合わせ、自由自在に着回し、組み合わせられるビジネスウエアの新常識になる」と青木会長兼社長は強調する。