トンカツ市場の空白地帯!? 物語コーポレーションが挑む低価格&郊外立地新業態の勝算
代表的な日本料理の一つとして人気を誇る「トンカツ」。専門店も個人店から大手チェーンまで数多く存在するが、そこへ新たに殴り込みをかけたのが、外食業界の風雲児である物語コーポレーション(愛知県)だ。集中仕入れのバイイングパワー、独自の低コスト運営のノウハウなどを生かし、リーズナブルなメニューを武器にトンカツの「空白地帯」とも言える郊外市場を深耕。今後300店舗以上のチェーン展開をねらう。新業態の立ち上げをリードした同社の加藤央之社長に、勝算を語ってもらった。
トンカツの潜在的市場規模は3000億円以上

「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」で知られる大手飲食店チェーンの物語コーポレーションは2025年2月20日、トンカツ専門店業態の第1号店を本拠地である愛知県豊橋市にオープンした。「熟成肉とんかつ ロース堂豊橋曙本店」だ。店舗面積は88.41坪(92席)、営業時間は11~23時。ロードサイドで、31台収容の駐車場を備える。
トンカツと言えば、老舗や有名店がひしめく「レッドオーシャン」。物語コーポレーションはこれまで多業態展開で成長してきたとはいえ、なぜ今「トンカツ」で新たな勝負を挑むのか。加藤央之社長は、次のように説明する。
「実はトンカツ専門店には、リーズナブルな価格帯かつ郊外型ロードサイドの業態が今までなかった。そこにビジネスチャンスがあると判断した」
加藤社長によれば、トンカツ市場は主に、定食をメーンに提供するレストラン業態(平均客単価1500円前後)、カツ丼を中心としたファストフード業態(平均客単価900円前後)で構成されるという。市場規模は現在約2000億円で、そのうち、レストランが約1300億円、ファストフードが約700億円を占める。
「市場規模だけで見れば、焼肉の約6000億円に比べれば小さいが、ウナギやカレーよりは大きい。業態別の立地条件を見ても、レストランはショッピングセンター、ファストフードは郊外と、それぞれ明確なすみ分けがなされている」(加藤社長)
郊外型立地では、ファストフードとの「価格の壁」があることから、レストラン業態のプレイヤーは少なく、路面の単独店、もしくはエリアのローカルチェーンがメーンとなっている。「ファストフード市場では、チェーン店である『かつや』さんの独壇場だが、レストラン市場では、大手チェーンは大都市圏が中心の『とんかつ和幸』さんなどに限られ、トップシェアでも現状10%ほど」(同)
そこで、「レストラン業態でも価格破壊ができれば、郊外市場が開拓できると想定した。トンカツは、和食店などでも定番メニューになっているように、実は潜在的なニーズが大きい。インバウンドの人気なども加味すれば、イノベーションによって、市場が3000億円以上に成長する可能性がある」と、加藤社長は説明する。

物語コーポレーションには、年商1000億円以上という集中仕入れのスケールメリットのほか、既存業態で培った食材の独自調達ルート、加工技術、店舗運営のノウハウといった、さまざまな強みがある。「そうした当社の強みを活用すれば、トンカツでも低価格を実現できると考えた」(同)