寿司チェーン・や台ずしが創造する”寿司居酒屋の新常識”

名古屋発、全国展開を進める寿司居酒屋チェーン「や台ずし」。店舗数は全国340店にのぼり、今後もさらなる出店拡大をめざしている。その成長の背景には、地域密着の店づくり、寿司×居酒屋という独自の業態戦略、職人育成と内製化によるコストコントロールなど、巧みな経営判断がある。運営元のヨシックスホールディングス(愛知県/吉岡昌成会長CEO:以下、ヨシックス)の常務取締役 伊達富夫氏、執行役員 経営企画室長 松岡龍司氏に、や台ずし誕生の経緯から将来のビジョンまでを聞いた。

競合不在のすき間市場を突く「屋台×寿司」業態

や台ずし金沢本町
石川県・金沢本町の店舗外観。激戦区金沢でも人気を博す

 「や台ずし」の原点は、意外にも弁当のフランチャイズ事業にある。その後、鉄板焼きやお好み焼きの居酒屋業態「や台や」で成功を収めたヨシックスは、開放感、賑わいを感じさせる“屋台風”の店舗づくりを軸に新たな挑戦を構想する。

 鉄板焼き業態から一転、寿司店を始めるきっかけとなったのは、「や台や」に回転寿司店出身の寿司職人が入ってきたこと。「彼が『すし屋をやりたい』と提案してきたのをきっかけに、屋台風の楽しい雰囲気で寿司が食べられる店をつくれないか、というアイデアが生まれた」と伊達氏は話す。

 吉岡会長がこの着想に共鳴し、や台ずしが誕生した。大きな人気を集めた要因は、“寿司の第三極”を築いたためだ。

「高級寿司店と回転寿司チェーンに二極化する市場の中で、職人が握る本格寿司を居酒屋価格で提供するというポジションは、競合不在のすき間市場だった」(伊達氏)

や台ずし赤間駅北口町
福岡県・赤間駅北口前の店舗外観。周囲には田んぼが広がるエリアだが、連日賑わいを見せているという

 大きな特徴は、郊外の駅前、いわゆる「1.5等地」「2等地」に出店することで家賃を抑えている点だ。浮いたコストを食材の原価に回すことで、味・大きさ・鮮度にこだわる握り寿司を1貫税込65円~という価格設定で提供する。これが消費者にとって「わかりやすい魅力」となっている。

 伊達氏によると「や台ずしの店舗は、30坪60席前後の規模が標準。売上高に占める家賃の比率は約7%、FL(食材と人件費)も60%台を維持することで、安定した収益構造の確保につなげている」のだという。

 松岡氏が「チェーン店では全国共通で『〇〇産』と地域限定のこだわりの食材を仕入れるが、や台ずしは地元の卸売業者から食材を購入している。各地域の地元の業者を複数社使うことで、適正価格を見極めることができ、原価抑制につなげている」と話す通り、食材の調達においても工夫をこらす。

ページ: 1 2 3 4

Previous Post Next Post